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電線は何を伝えているのだろう
東京のような都会で空を見上げると、建物に狭められた視界の中を、スイスイと電線が交差していく。たわんだり、ピンと張りつめたり、重なり合ったり、太さなんかもまちまちで、飽きずに眺めることができる。電線のむこうにいる空は、ひどくきゅうくつそうにも見えるし、やけに遠くにあるようにも見える。

幼いころ、電線は電話の声を通しているのだと教えられたとき、誰かの会話が聞こえるのだと思い込んで、電信柱にぴったり耳をおしあてたのだった。あの黒い線の中を、声という無形のものが通っていくということが不思議でしかたなかった。どうやって、一瞬にして声は線の中を進んでいくのだろう。遠くにいる人の声が、まるでそばにいて話すようなタイミングで伝わっているのだから、電線の中を伝わるスピードはものすごく速いはずだ。電線の中に瞬時に声を運ぶしくみがあるのだろうか。それとも、声が電線の中をすばやく走っていくのだろうか…

こどもが興味を失ってからずっと、日常の風景のなかのガラクタに片付いてしまっていた電信柱と電線の謎は、モノクロの空を五線譜みたいに平行に走る電線の交差から、ふたたびここに落っこちてきた。
by skywriter | 2004-03-16 00:50 | 電線
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